高齢女性が語る。
「保険会社に電話をかけたら、何番を押せのなんのって」
「やっと人(オペレータ)と話ができたと思ったら、手続きの紙を送るから、記入して返送してくれというの。
不備があると面倒だから、記入が必要なところに鉛筆で丸をつけて欲しいといったら、「それはできません」といわれちゃった。記入例を同封するからそれを見て書いてっていうのだけど、不親切だと思わない?
そんな簡単なこと、自分の仕事なのになんで「できない」なんていうのかしら?」
「それは「できない」かもしれないねぇ。
まず第一に、どこを書かなければいけないかを判断しながら丸を付ける。
責任を問われるからね。もし足りなかったら、丸をつけていなかったからということになる。責任をもって判断しなければならないとなれば、慎重に確認することになり、大変だもの。
第二に、その作業している間、電話が取れない。
電話を受けることが君の仕事だ!といわれている人は、お客さんにいわれたからといってそんなことをしていたら、怒られてしまうでしょう。」
サラリーマンとして働いていれば想像のつくことだが、自営業としてもしくは自己裁量で働いてきた人にはどうも理解がしにくいらしい。
「どこを記入したらいいかわからずに、またやり取りが出たらムダじゃない?」
重ねて尋ねられる。
「不備な書類が送られる先は、別の担当だし、
その担当の人が「不備がありましたよ」といって連絡して新しい書類を送ったりするから、電話係の人は「自分の問題ではない!」とおもうんだろうねぇ」
「ふーん。そんなことになっているのかしらねぇ。
でもムダな話だわねぇ」
顧客に間違わせてから修正、でもいい、という考え方だ。
間違うかもと確認をする客に対しては、そのスタンスがはっきりする。
たしかに結果は同じかもしれないが顧客への対応姿勢は大きく異なる。
仕事の仕方としても、責任の範囲が限定的だし、気楽なようだが、
真剣に依頼をする客に対応する時、すこし思うところがあるのではないだろうか。
なんとか対応してあげたい、と感じるとき、
最近の仕事が失ってきた「裁量」や「自己完結」への欲求が出てくるのではないだろうか。