年末の仕事に一区切りつけ、暗くなった夜道を駅に急ぐ。
「すみません」と声。
見ると、東南アジア系のおねえさんと目があう。
スーツケースを手にこちらに呼び掛けている。
手に持ったお菓子の袋を差出し、「お菓子を買ってください」という。
バブル崩壊期ごろ、昆布菓子売りが住宅地をまわっていたことを思い出す。
「は?」
「困っているんです」
あー。やっかいなことになっちゃったなぁ。
昆布売りは、サギっぽいから断れなんて言われていたっけ。
さて。
「どうしたの?」
「仕事がなくなってしまって・・・」
あー、嘘かもしれない。
けれども本当かもしれない。
入管で亡くなった女性の顔も浮かぶ。日本はひどい国なのか?
「あー、わかった、お菓子はいらないから」
少しのおカネを渡す。
嘘かもしれない。サギかもしれない。
でも、今世の中がおかしすぎる。
その抗議の意味も込めて、少しのおカネを自分の財布から出す。
この複雑な気持ちをどのようなアクションにつなげるべきなのだろう。