「継承」。
第二次世界大戦中、イギリス空軍大佐だったピーター・タウンゼント。
戦後、作家となり、戦争被害を受けた子供たちにまなざしを向けた。
そこで出会った長崎の郵便配達少年だったスミテル。
スミテルのことを書いた「長崎の郵便配達」という本が1982年に生まれている。
映画では語られるか語られないか程度の触れられ方だが、スミテルさんが復刊を望み、その意向を聞いた映画監督である川瀬さんがピーターの娘のイザベルに会ったことから映画が着想されたらしい。
イザベルは、2人の母でもある。
スミテルさんのたどった道を、それはすなわち父ピーターのたどった道を体験する。
父の残した本「長崎の郵便配達」だけではなく、肉声の入ったボイスメモを聞きながら。
その内容は、ピーターが長崎で出会った人達の記憶の中のピーターとも重なり、父娘の物語ともいえる。
赤い郵便配達自転車にのった少年も、折に触れ風景にあらわれファンタジックでもある。
スミテルさんのたどった道、父ピーターのたどった道を体験し、戦争、核兵器への態度を決めていくのは、イザベルだけではなく、制作者だけではなく、私たち自身である。
スミテルさんの強い態度が、勇気を与えてくれる。
「継承」だとおもう。
スミテルさんのピーターさんのメッセージを継承し、配達するのだ、と思う。
書籍の案内があってもよかったのでは?と思うほど、書籍については舞台挨拶でも触れられていなかった。
探して買ってみたいと思います。