「大企業の不祥事」は、「現場」と遠くなる大きな組織の必然 

「大企業の不祥事」特集@朝日新聞20211230

 

「各社の報告書から、「もの言えぬ閉鎖的な組織」が見えてくる。・・チェック体制の弱さも指摘されている」

そう、その通り。

でももう一歩踏み込まなきゃ。

なんで「もの言えない」のか、「チェック体制が弱い」のか。

「もの言えない」ではなく「言わない」ではないのか。

 

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記事の中では、対策として

①情報を経営陣に伝える

②失敗に関する情報をその都度社内で共有

③社外の目で経営監視/外部人材の登用

④人事異動を増やす       とかがあがっているのだが・・・

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一見、意味がありそうに見えるが、これでは「実効性はない」と思う。

 

判断には情報の意味解釈が必要である。

①情報を経営陣に伝える

経営陣は、その情報の意味を判断できるか

→価値判断が「現場」と違う。

例えば、顧客への提供価値を重んずる現場、

実績数値を(内実がなくても)重んじる上層部、現場の判断根拠に共感できない上層部

→「判断できない」もしくは「我々現場とは異なる判断をするとわかっている」ならば

→情報を伝えてもムダと現場は判断するのではないか。

 *上層部の教育も現場の職務であろうか?

 

②失敗に関する情報をその都度社内で共有

失敗情報を誰に共有するのか

→共有先が増える=責任所在があいまいになる、だけではないのか

→失敗情報から提言を上げたとして、上層部はそれを判断できるか?(①と同じ)

 

③社外の目で経営監視/外部人材の登用

社外の目、は、社内に閉じた文化に新風を吹き込ませるが、

現場状況については上層部と同じくもしくはそれ以上にわからないのではないか。

現場状況やその判断についてより添える社外の目が必要であろう。

これまでの社外、がイエスマンの多い「お友達内閣」との記載もあったが、確固たる基準も持ち合わせずモノを言えば「イエス」という答えが多くなるのも必然である。

*基準も持ち合わせないのに「監視役」を引き受ける度胸には敬意を払いたいが。

 

④人事異動を増やす

幅広い社内見識を持つためには必要なのかもしれない。が、「現場」の経験値が下がり、現状「もの言えない」とはいえ「存在」している「確固たる基準」が社内から失われるきっかけとなりうるのではないか、と危惧する。

 

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社員たちは「もの言えない」ではなく、

「言ってもムダ」と言わなくなっているのが実態ではないか。

 

この「現場」と「上層部」の本質的な断絶をイメージして、4面にある「報告書の社員の主な意見」を読み直してほしい。少し受け取り方が変わってくるはずである。

 

一番わかりやすい意見「経営幹部がポンコツで現場実態を理解できておらず、意見・提案などをしても理解してもらえず、意味がない、ムダだと感じる」

同じ意見の中の「上司が高圧的な態度を取り」というのもよく聞く話。

おそらくは、「現場実態」という本来事業を営むものなら知らねばならない拠って立つ判断基準を持たぬが故の「強がり」ではないか。

 

判断基準を持ちえぬ現場と離れすぎた「上層部」。

大企業の不祥事の、本質的な根はここにある。

 

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朝日新聞20211230

1面 三菱電機東芝・・・相次ぎ不祥事 もの言えぬ閉鎖性 背景に 村上晃一

4面 不祥事調査報告書「上層部が保身に走る」「責任を個人に丸投 新田哲史・内藤尚志